彼らが同棲を始めて5年目のクリスマス、
当時の仕事を休職してドイツに留学していた私は
二人に招かれ、彼らとともに休暇を過ごした。
天井に届かんばかりのもみの木は
純白のデコレーションに身を包み、
その足元には大小様々なカラフルな包みを並べている。
テーブルには、どこの家庭もそうであるように、
クッキーやチョコレートが並べられていた。
彼らは毎日のように友人や家族を招き、
また招かれもした。
「足」のない私はどこへ行くにも彼らと一緒だった。
そしてクリスマスイヴの夜、
私はいつものように二人に連れられて、
近くの教会に出向いた。
片田舎の小さな教会はすっぽりと雪に覆われ、
何千本というロウソクの灯りを小さな窓から漏らしていた。
何とも幻想的なその様に、
私は言葉を失い立ちつくした。
教会の中はすでに厳粛な雰囲気に包まれていた。
私たちは祭壇へ向かう、真中の通路を前へ進み、
適当なところを右に折れ、静かに腰をおろした。
いつものことだが、
ヨークとイヴォンは私を真中に挟む。
きっと、私が取り残されたと感じないように
気を遣っているのだろう。
もともとモーツァルトのオペラに感動し、
ドイツ語に興味をもった私である。
聖歌隊の歌声に心を揺さぶられ、
参列者の大合唱に酔いしれ、
もはやここは別世界だと錯覚した頃、
私はその奇跡を目の当たりにした。
ヨークとイヴォンが、私の目の前、
正確には私の両膝の上方で指輪を交換したのだ。
一瞬何が起こったのか把握できなかった。
しかし彼らが5年の共同生活の末、
婚約したことを悟るのに、
さほど時間はかからなかった。
「サチコ、僕たちは君が縁で知り合った。
そして君の前で婚約の誓いを立てた。
これからも、ずっと僕たちを見守って欲しい」
私は感激のあまり、言葉が出なかった。
言葉の替わりに溢れたのは、喜びの涙だった。
残念ながら、
私はどうしても仕事の都合がつかず、
2年後の彼らの結婚式に参列できなかったが、
彼らとは今でも深い友情で結ばれている。
そして、毎年クリスマスになると、
どこの国にいても彼らのことを思い出す。
北キプロスのカルパス半島に生息する野生のロバたち。
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