・・つづき
火葬場が近づくにつれ、煙と異臭が私を襲った。
引き返そう、と何度もためらったが、
私の足は思考に反して、火葬場に近づこうとする。
布に包まれた遺体は親族によって担がれ、
狭い路地を抜けてここへやってくる。
布や装飾品のありかたで現世での階級が
見え隠れしている。
布のみで包まれたものは、
明らかに人間と分かる形をしている。
組まれた薪の上で、2時間から3時間、
聖なる火がその姿を燃やしていく。
火葬されていた3体のうち1体が最後の炎を燃やし、
灰となった骨に水がかけられた。
ジューッという音がして、最後のか細い煙を上げた。
灰はガンガーに流され、その河で人々は沐浴する。
洗濯をする。顔を洗い、指で歯磨きをする。
牛が排尿する。すべての人間の営みを呑みこみ、
そしてまた、それらを超越して、
静かに流れているようだ。
大河はやがて海へ注ぎ、
天に戻って再びすべての源となって、生命を育む。
そして、生命は再び大河に返される。
始まりもなく、終わりもない、
永遠の時の回転を一瞬にして見たような気がした。
死の色が濃いぶん、この町の生はさらに鮮烈だ。
祈りの声、物売りのわめき声、
怒声に子供の泣き声、猿の鳴き声、
牛のあくび、自転車の車輪のきしみ、
自動車のエンジン、カチャカチャと音を響かせる
金属食器、どこからともなく聞こえてくる鐘の音、
ありとあらゆ生活音に鼓膜を刺激される。
生と死が剥き出しのまま共存している。
ヴァーラナシーを発つ日の早朝、
私は再びガンガーを訪れた。
コーヒー牛乳色のガンガーにボートを浮かべ、
朝日を浴びて沐浴する人々の姿を
もう1度目に焼き付けておきたかった。
現世での差別を離れ、一様に聖河に浸り、
祈りを捧げる人々。
ありとあらゆるものを呑みこみ、
音もたてずに流れるガンガー。
全ての始まりで、全ての終着点。
人間とは何か、生とは、死とは、家族とは、
世界とは、宇宙とは、全ての答えが
そこにあるような気がした。
北キプロスのカルパス半島に生息する野生のロバたち。
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